「フランスの最も美しい村(Les plus beaux villages de France)」に登録されているサン・ギレム・ル・デゼール(Saint-Guilhem-le-Désert)は、切り立った断崖の深い峡谷にある小さな村で、スペインにあるサン・ティアゴ・デ・コンポステーラ(フランス語だとサン・ジャック・ド・コンポステル)への巡礼街道沿いに位置しています。今でこそ車道も整備され、観光客も気軽に訪れられますが、昔はこの険しい山間を超えるのは困難だっただろうことを思うと、巡礼者達の苦労が偲ばれます。
ホタテ貝の印

9世紀の初め、この地に修道院を建てた聖ギレムの名前と、砂漠の様な無人の地であることから、Saint-Guilhem-le-Désertと名付けられました。聖ギレムとは、シャルルマーニュ大帝の従兄弟で、トゥールズ伯でありアキテーヌ公でもあったが、当時イベリア半島からのイスラム勢力の侵略を防ぐ戦いで軍を率いた人。武器を置く決心をして引退した後、聖ブノワ(ベネディクト)の導きによって修道士になり、この地で亡くなるまで過ごしたのだそう・・・。

村の入り口
村の入り口

大昔、シャルルマーニュを世界史で習った頃は、異次元すぎて全くイメージがつかず、お父さんの「ピピン」という名前が可愛いとか思ったことくらいしか覚えていなかったが、今になって少しお近づきになれるとは。(ちなみにフランス語ではペパン)

入り口付近の家
入り口付近の家

さて、村の入り口手前には駐車場があり、そこに車を止めて村に歩いて入るとすぐ、崖の下を流れる川を見下ろせるレストランがあったので、私たちはここでまず犬連れランチをしました。

このレストランはとても庶民的で、南仏人の見本のような訛りの強い陽気なお兄さんが、テキパキと愛想よくサービスしてくれました。アラカルトは無く、確か14ユーロ位の一律メニューで、出て来るのを待つのみ。しばらくすると、学校の給食で見たようなステンレスの大きな容器に、ラタトゥイユとお肉とフライドポテトがドカンと乗って出てきた上に、「もっと欲しかったら持ってくるよ!」とのことでした。

入り口にあるレストラン
入り口にある庶民的レストラン

隣のテーブルにいた地元のおじいちゃんグループが、ビニール袋に入れたソラマメを差し入れに持ってきており、それをウエイターのお兄さんが受け取ると、全席のテーブルに配ってくれました。もちろんタダ。
さらに、お昼時でとても忙しそうなお兄さんは、デザートを食べ終わった私達のところに、間違えてまたデザートを持ってきてしまったので、もう食べ終わったよと言うと、一瞬考えた後、「いいよ、また食べれば!」と言って全員分デザートのおかわりを置いていってくれたのでした。味はともかく、、、私達はそんな事があってとても楽しめました。お腹がすいてボリュームがあればOK!な人や、庶民的な雰囲気を味わい方は是非このお店で。味にこだわる人やお洒落感を求めるなら、他のお店を選んだ方が良いかも・・・。ちなみに隣に別のレストランがありましたが、そちらはどんな感じかは不明です。

さて、ご飯を食べおわっていよいよ村へ。

「フランスの美しい村」に登録されているという期待に違わず、どこを切り取っても絵になる本当に美しい小道と家並み。両サイドには、可愛らしい雑貨やアクセサリー、ガラス製品などを飾った様々なお店があり、中を覗きながら歩くのも楽しみの一つです。というか、かなり目移りしてしまい、なかなか先に進めない程だった・・・。

道を進むと右側に見えてくるのは、小円柱を真ん中にしたアーチ型の対の窓のある、11ー12世紀頃のロマネスク様式の建築の家(La maison Lorimy)。私達が訪れた4月下旬には、藤が見事に咲いていました。

La maison Lorimy
La maison Lorimy

そして、この村の一番の見どころはもちろん、世界遺産にも登録されている、聖ギレムが建てたジュロンヌ修道院と教会。村の中心を目指して道なりに歩いていけば、すぐに辿り着きます。この村のシンボルとも言える、印象的な教会後陣のロマネスク様式の装飾アーケード。この修道院は、9世紀以降数世紀に渡って増築されており、この部分は17世紀にベネディクト修道会によって、聖歌隊のために窓を広くして光を取り入れるために作られたのではないかとのこと。

ジュロンヌ修道院と教会
ジュロンヌ修道院と教会

 

教会の中には、道をぐるっと回ってリベルテ広場(Place de la liverté)にある入り口から入れます。中は動物禁止なので、犬連れの私達は交代で入ったのですが、入り口に、中に入っている飼い主さんを待つお利口なワンコが。一応リードは付けているもののどこにも繋がれていないのに、身動きひとつせずじっと待つワンコ・・・。どんな風に躾をしているんだろうと感心。

そんなワンコの脇を通って中へ。

教会の入り口で待つ犬
教会の入り口で待つ犬

教会の内部はアーチと直線の組み合わせの、美しいけれど至って質素な作り。どこかからグレゴリオ聖歌が聞こえてきそうな雰囲気で、以前訪れたあのモン・サン・ミッシェルの修道院と同じ空気を感じました。時代は100年程違うけれど、この時代はまだベネディクト修道会の時代であり、清貧、純潔を重んじる厳しい修道会の精神が、装飾を一切省いた、こういった建築様式に現れている時代だったのか。後の時代のゴシック様式の教会も荘厳で美しいけれど、本当に無の境地で自分に立ち帰り、瞑想したり祈りを捧げるのは、こういう場所であるべきなのかもしれないと思ったのでした。

聖ギレムのクリプト
聖ギレムのクリプト

この教会の中には、聖ギレムのクリプトもありました。また、聖ギレムがシャルルマーニュ大帝から授けられたという聖遺物、真の十字架(Vrai Croix)の欠片や、聖母マリアの衣服の一部が入っているという銀の聖遺物入れがあります。本当にそれらが入っているのだとしたら、とんでもないものを目にしていることになるのだけれど、果たして本物かどうかは誰にもわかりません。ただ、遥か昔の非常に貴重な歴史遺産であることは確かで、急に中世の精神世界に入り込んだような、とても厳かで暗い、凛とした空気が流れている場所でした。

真の十字架
真の十字架の欠片の聖遺物入れ

教会を出て現実世界に戻ると、そこには樹齢150年というプラタナスの大樹があって、人々が周りに集まってお茶を飲んだりする憩いの場になっています。

フランス(というかヨーロッパ?)の町や村の中心には、必ず教会と広場があって、人々がいつも何かしら集まって過ごしているのがとても心地好さそう。尚、観光案内所(Office de Tourisme)もここにあるので、先にこちらに寄って、地図や案内パンフレットなどを入手してから、村を回るのも良いかもしれません。と言ってもとても小さな村なので、地図無しでもすぐに一周できてしまいますが。

ところで、道を歩いていると、ところどころの家に、ひまわりにも似た何かのドライフラワーの様な、不思議な飾りを見かけました。

La cardabelle
幸せを運んで来るというLa cardabelle

これはアザミ属の花の一種で、La cardabelleと呼ばれており、幸せを運んで来るということで家々に飾られているのだそうです。雨が降ると花の中心の部分を閉じるために雨を知らせる花とも言われ、アーティチョークの様な味で食べることもできるのだそう。また、尖った葉の部分は羊毛を梳くのにも使えるとか。しかし絶滅の道を辿っているそうで、保護対象になっているそうです。

最後に私達は、村をもう一周して、今度は可愛らしいお店の中をじっくり見て回ったり、村の脇にある小さな滝と小川で犬を遊ばせてから帰路につきました。

フランスの田舎には、こういったそれほど有名ではない、しかし素晴らしい歴史的な場所がたくさんに残されていて、それもただ過去の遺物として保存されているだけでなく、現代に生きる人たちがその町や村の建物の中で今も暮らしており、歴史遺産を守りながら、新しい生活の形を作りあげて、生き生きと暮らしている印象を受けます。

花が美しい小道
花が美しい小道
引き出しなどの取手
引出しなどの取手が飾られている店
フクロウの飾り物のある雑貨屋さん
フクロウの飾り物のある雑貨屋さん

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